束草と雪岳山:ソウルから1泊2日、山と港町の旅ガイド
ソウルから高速バスで行く束草と雪岳山。公園入口への路線バス、体力別のコース、春秋の入山規制、アバイ村やケッペまで、1泊2日のモデルプランつきで紹介します。

ソウルに何度か来て、王宮や市場はひととおり歩いた。次は少し足をのばして、山と海の両方がある場所へ行ってみたい。そんな方に向いているのが、江原道(カンウォンド)の北東の港町・束草(ソクチョ)と、その背後にそびえる雪岳山(ソラクサン)国立公園です。高速バスで片道2〜3時間ほど。朝は岩山の登山道を歩き、夕方は港で海鮮を食べ、翌日にはソウルへ戻る、という1泊2日の旅がレンタカーなしで組めます。
この記事では、ソウルからのバスの乗り方、市内から公園入口までの路線バス、体力に合わせたコースの選び方、見落としがちな季節ごとの入山規制、そして束草の町で立ち寄りたい場所をまとめました。コースの距離・所要時間・規制の内容は、国立公園公団(KNPS)と束草市の公式ページで確認したもので、出典は末尾にまとめています。
束草と雪岳山の基本
束草市の案内によると、雪岳山は1970年に韓国で5番目の国立公園に指定され、1982年には国内で初めてユネスコの生物圏保存地域になりました。いちばん高い峰である大青峰(テチョンボン)は標高1,708m。「雪岳」という名前は、山頂が一年のうち長い期間雪に覆われていることに由来するそうです。とはいえ、旅行者が山頂まで登る必要はまったくありません。多くの人が訪れるのは束草側の入口「雪岳洞(ソラクドン)」で、ここにある小公園(ソゴンウォン)から短め・中くらいのコースがいくつも出ています。
束草の市街地は、この入口から路線バスで20分ほど。高速バスターミナル、海水浴場、市場、アバイ村、港がまとまっていて、歩くか短いタクシー移動で回れます。山と町がこれだけ近いことが、車なしの1泊2日を成り立たせているポイントです。
ソウルから束草へ:高速バスか市外バス
公共交通で行くなら、基本はバスです。KNPSの雪岳山交通案内には、ソウルの出発地として二つが載っています。江南(カンナム)にあるソウル高速バスターミナルから束草高速バスターミナルへ向かう高速バスと、東ソウル総合ターミナルから束草市外バスターミナルへ向かう市外バスです。束草市の交通案内も同じ二つを挙げ、バスはソウル〜春川高速道路とミシリョン・トンネルを通ると説明しています。所要時間は二つの公式ページで少しずつ数字が違うため、東ソウルからは2時間ちょっと、江南からは3時間弱が目安と考えておくとよいでしょう。週末や紅葉シーズンは満席になることもあるので、日程が決まっているなら帰りの便も早めに予約しておくと安心です。
注意したいのは、束草の二つのターミナルが別の場所にあることです。高速バスターミナルは海のすぐ近くで、束草市によると束草海水浴場まで徒歩約5分。市外バスターミナルは町の別の場所にあるので、チケットがどちら発着かを確認しておきましょう。どちらからも路線バスやタクシーが使えます。韓国のバスの予約方法や交通カードについては、当サイトの「韓国の移動ガイド」もあわせてどうぞ。

市内から公園入口へ:7番・7-1番の市内バス
公式情報はどちらも同じ路線を案内しています。束草市は雪岳山方面の市内バスとして7番と7-1番を挙げ、KNPSは「7番または7-1番で小公園駐車場へ、そこから徒歩3分で雪岳洞探訪支援センター(登山道の起点)」と案内しています。乗車時間はKNPSによると、高速バスターミナルから約20分、市外バスターミナルから約30分。各路線の時刻表は束草市の交通案内ページからダウンロードでき、公共交通の無料案内電話(080-850-9486、平日9時30分〜17時30分)も同じページに載っています。
10月から11月、とくに週末は終点付近がかなり混み合います。朝早く動けば登山道も静かで、日没までの時間にも余裕ができます。この「日没」は、後で触れる入山時間のルールに関わってくるので覚えておいてください。
新興寺:入口すぐの古刹
小公園から少し歩くと、蔚山岩(ウルサンバウィ)方面への道沿いに新興寺(シンフンサ)があります。門の手前で目に入るのが巨大な青銅の座仏。束草市の記録では、南北統一を願って1987年から1997年まで10年かけて造られたもので、高さは14.6mとされています。
古い建物はその奥です。束草市によると、本堂の極楽宝殿(クンナクボジョン)は1649年に建てられ、1750年と1821年に手が入った朝鮮後期の建物。その前に立つ横長の楼閣・普済楼(ポジェル)は1644年の建立です。普済楼の下をくぐって本堂の中庭に入る造りは、この寺の建築上の特徴として市も紹介しています。日本のお寺と同じく、肌の出すぎない服装で、静かに、そしてお参りしている人を撮らないのが基本のマナー。お寺に泊まる体験については「テンプルステイ・ガイド」で詳しく紹介しています。

蔚山岩:半日で登れる定番コース
花崗岩の岩峰がずらりと連なる蔚山岩。KNPSはここへのコースを雪岳山の代表的なコースとして紹介しています。KNPSによると、新興寺から「揺れ岩」と呼ばれる大きな岩・フンドゥルバウィを経て蔚山岩の上まで、片道3.8km・約2時間。往復で7.6km・約4時間です。
前半と後半でまったく性格が違うのがこのコースの特徴です。最初の2.8km、フンドゥルバウィと小さな庵・桂祖庵(ケジョアム)までは約1時間。土の道や石の道、木道がゆるやかに続き、KNPSは子どもや高齢の方でも無理なく歩ける区間としています。一方、残りの1.0km、フンドゥルバウィから頂上までも約1時間かかります。ほぼ全区間が岩に取り付けられた急な鉄製の階段だからです。KNPSは登り始める前に体調を確かめるよう呼びかけ、頂上付近では落石にも注意するよう案内しています。階段が苦手なら、フンドゥルバウィで引き返すのも十分にありです。
KNPSがとくに勧めている時期は10月中旬から11月初旬。岩と紅葉の取り合わせが見ごろになる頃です。山の天気は急に崩れることがあると公園事務所も注意を促しているので、水、羽織るもの、軽い食べ物は必ず持っていきましょう。

飛仙台と、谷沿いのやさしいコース
階段登りは避けたいけれど景色は楽しみたい、という方には飛仙台(ピソンデ)がおすすめです。KNPSによると、小公園から新興寺、臥仙台(ワソンデ)を経て飛仙台まで片道3.0km・約1時間20分。ほとんどが沢沿いの道で、ところどころ石段があります。名前は、この岩と淵から天女が天へ昇っていったという言い伝えに由来します。KNPSはこのコースを子どもや高齢の方にも向くとし、最初の3分の1ほどには車いすでも通れる自然観察路があること、そして山火事予防のための入山規制期間中も歩けることを案内しています。
飛仙台からは、断崖の中腹にある天然の洞窟・金剛窟(クムガングル)まで0.6km・約40分の脇道があります。KNPSによると急な道で、最後は鉄階段。小公園からの往復は7.2km・約3時間20分です。入山時間のルールでは、飛仙台から金剛窟方面へ入れるのは14時までとなっています。
同じ小公園からは、滝を目指すコースもあります。KNPSによると、小公園から飛龍瀑布(ピリョン滝)まで2.4km・約1時間で、最初の1.2kmはベビーカーや車いすでも通行可能。そこからさらに急な木製階段を0.4km、約30分登ると、土旺城(トワンソン)滝を望む展望台に着きます。束草市は、フンドゥルバウィ、飛龍瀑布、飛仙台の三つを「初心者でも歩ける3大コース」として紹介しています。

ケーブルカーで権金城へ
登山はせずに山の景色だけ見たいなら、雪岳ケーブルカーがあります。小公園の中から、標高約700mの岩峰・権金城(クォングムソン)まで上がります。束草市の説明によると、1253年のモンゴル侵攻の際、権氏と金氏の二人の将軍が一晩で城を築いたという言い伝えが名前の由来。城壁は今ではほとんど残っていません。上の駅から少し登ると最も高い岩場に出て、外雪岳の峰々や、晴れた日には海まで見渡せます。
並ぶ前に知っておきたいのは、束草市のページにある次の3点です。チケットは往復券のみで片道券はないこと、予約はできないこと、そして強風や悪天候のときは運休すること。運賃や運行時間は運営会社が季節によって決めているので、当日確認してください。
公園内のルールと入山規制
韓国の国立公園はルールが厳しく、雪岳山はその中でも特にしっかり管理されています。短い滞在で関係してくるのは次の点です。
- 明るいうちだけ。入山時間指定制により、小公園から蔚山岩、土旺城滝展望台、飛仙台、権金城へ向かう登山道は、日没後から翌日の日の出2時間前まで入れません。長めのコースは暗くなる前に戻れるよう計画を。
- 春と秋の山火事予防規制。春と秋には山火事の危険を減らすため、高地の登山道が閉鎖されます。2026年春は3月4日から5月15日まで。2025年秋は11月15日から12月15日まででした。2026年秋の告知はこの記事の執筆時点ではまだ出ていないので、出発前にKNPSサイトの規制情報を確認してください。
- 低地のコースは基本的に開いています。どちらの規制期間も、蔚山岩、飛仙台方面の谷、土旺城滝展望台などの低地コースは開放されていました。影響を受けるのは主に大青峰や長い稜線を目指す人です。
- 喫煙・火気・炊事・登山道外への立ち入りは禁止。公園事務所の2025年11月の発表では、立入禁止区域への進入は初回20万ウォンの過料で、繰り返すと高くなり、喫煙や引火物の所持はさらに高額とされています。
- 大雨、大雪、台風、春の雪解けで落石の危険が高いときなどは、どのコースも急に閉鎖されることがあります。
紅葉全般については、韓国の紅葉予報の見方や雪岳山が色づく時期を「韓国旅行のベストシーズン」の記事で詳しく解説しています。
束草の町:海水浴場、アバイ村、ケッペ
町歩きは、まず束草海水浴場から。松林の遊歩道が続く長い砂浜で、高速バスターミナルから歩いて5分ほどです。束草市によると一年中開放されていて入場は無料。泳げるのは夏の開設期間中、ブイで区切られた範囲の中だけです。

海水浴場の北、海と青草湖(チョンチョホ)に挟まれた砂州にあるのがアバイ村です。束草市によると、朝鮮戦争のとき、現在の北朝鮮にあたる咸鏡道(ハムギョンド)から避難してきた人々が、すぐに故郷へ帰れると信じてこの砂地に住み着いたのが始まり。「アバイ」は咸鏡道の方言で年配の男性を指す言葉です。今も冷麺やイカの腸詰め(オジンオスンデ)など咸鏡道式の料理で知られ、市によると文化観光解説士の案内を予約して村の歴史を聞くこともできます。
村と中心街を隔てる細い水路を渡るのが、ケッペと呼ばれる渡し船です。乗客がワイヤーにかぎを引っかけて、みんなで船を引っぱって渡ります。束草市によると、避難民が町の中心へ出るためにつくったもの。2026年10月時点で市が案内している料金は大人片道500ウォン。運航時間は5〜10月が5時〜23時、11〜4月が5時30分〜22時30分で、天候により変わることがあります。市の散策マップには、カードが使える券売機についての記載もあります。乗っている時間は数分ほど。ペットは乗船できません。
市場、大浦港、霊琴亭
ケッペの中心街側の船着き場からは、束草市の散策マップによると数分で束草観光水産市場に着きます。町の伝統的な中央市場で、果物、唐辛子、スンデ、塩辛と、品物ごとに路地が分かれています。中でも目を引くのが、甘辛いフライドチキン「タッカンジョン」の店が並ぶ路地で、市も束草の名物のひとつとして紹介しています。地下には活魚の刺身を扱うフロアがあり、市によるとこの刺身センターは毎月第2水曜日が休みです。
町の南端にある大浦港(テポハン)も、海鮮を食べたいときの選択肢です。束草市は大浦港を「南から束草に入る玄関口」と紹介しており、港の隣には水産市場と海鮮の揚げ物を売る路地があります。港の裏手の散策路を少し登ると展望台があり、市によると港と蔚山岩の両方を見渡せます。
夕方は、東明洞(トンミョンドン)の束草灯台の下に広がる岩場、霊琴亭(ヨングムジョン)へ。波が岩に当たる音が、韓国の弦楽器・コムンゴを弾く音に似ていることから名付けられたそうです。岩場の上に架かる橋の先にあずまやがあり、束草市によると日の出・日の入りの名所で、いつでも立ち入れます。灯台の展望台までは歩いて10分ほどです。
見どころ一覧と所要時間の目安
| 場所 | どんなところ | 行き方 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 新興寺 | 雪岳洞入口の寺。1640年代の建物と巨大な青銅仏 | 市内バス7番・7-1番で小公園、そこから少し歩く | 45分〜1時間 |
| 蔚山岩 | 花崗岩の岩峰。途中に揺れ岩フンドゥルバウィ | 小公園から新興寺経由で徒歩、片道3.8km | 往復約4時間(KNPS) |
| 飛仙台 | 沢沿いの谷と岩盤。歩きやすいコース | 小公園から徒歩、片道3.0km | 往復約2時間40分。金剛窟まで足せば計約3時間20分(KNPS) |
| 飛龍瀑布・土旺城滝展望台 | 二つの滝。最初の1.2kmはベビーカー可 | 小公園から徒歩、展望台まで片道2.8km | 往復約3時間(KNPS) |
| 権金城(ケーブルカー) | 標高約700mの岩峰に残る城跡 | 小公園内からケーブルカー。往復券のみ・予約不可 | 1〜2時間。秋の混雑日はさらに長め |
| 束草海水浴場 | 松林の遊歩道がある町の浜 | 高速バスターミナルから徒歩約5分 | 30分〜1時間 |
| アバイ村・ケッペ | 避難民がつくった村と、手で引く渡し船 | 中心街から徒歩。ケッペで水路を渡る | 1〜1.5時間 |
| 束草観光水産市場 | 伝統的な中央市場。タッカンジョンの路地 | ケッペの船着き場から徒歩数分 | 約1時間 |
| 大浦港 | 水産市場と展望台のある漁港 | 町の南端。中心街からタクシーで短時間 | 1〜1.5時間 |
| 霊琴亭 | 束草灯台下の岩場とあずまや | 中心街や東明港から徒歩 | 30分〜1時間 |
1泊2日のモデルプラン
バスと徒歩だけで回るプランです。山はいちばん静かで日照時間にも余裕のある午前中に回します。
- 1日目・朝:東ソウルかソウル高速バスターミナルから早めの便で出発。荷物は宿に預けるか、チェックインが遅い場合はロッカーへ。
- 1日目・午後:アバイ村まで歩き、ケッペで水路を渡って束草観光水産市場へ。遅めの昼食に、タッカンジョンをひと箱。
- 1日目・夕方:霊琴亭で海の色が変わっていくのを眺め、束草海水浴場沿いを歩いて戻ります。
- 2日目・早朝:市内バス7番か7-1番で小公園へ。新興寺に寄ってから、コースを一つ選びます。体力があって階段も平気なら蔚山岩(約4時間)、やさしい谷歩きなら飛仙台(3時間弱)、歩かずに景色を見たいなら権金城へのケーブルカー。
- 2日目・午後:バスで町に戻り、中央市場か大浦港で海鮮の食事。午後のバスでソウルへ。
1日目に早く束草に着けるなら、順番を入れ替えて先に公園へ行き、町歩きを2日目に回しても構いません。山火事予防の規制期間中でも、このプランで使うのは通常開いている低地のコースなので、そのまま使えます。紅葉の最盛期はバスもケーブルカーも行列ができるので、さらに早めの行動を。
出発前のチェック
前日に確認しておきたいのは三つ。KNPSの規制情報ページで閉鎖中のコースがないか、海沿いではなく山の天気予報、そして帰りのバスの座席です。やさしいコースにも石段があるので、靴底のしっかりした靴で。小さな買い物用に、現金か交通カードも持っておくと安心です。ソウル近郊の山を歩いたことがあれば、雪岳山の低地コースも雰囲気は近いはず。違うのはスケールの大きさと、下山すれば海が待っていることです。
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