全州韓屋村ガイド:ソウルからの行き方と日帰り・1泊モデルコース
ソウルからKTXやバスで全州へ。慶基殿、殿洞聖堂、梧木台、郷校、南部市場の夜市、全州ビビンバまで、公式情報で確認した開館時間と日帰り・1泊2日のモデルコースを紹介します。

「昔ながらの韓屋(ハノク)が、今も人の暮らす町として残っている場所は?」と韓国の人に聞くと、まず名前が挙がるのが全羅北道の全州(チョンジュ)です。全州韓屋村は観光用に造られたテーマパークではなく、ふつうの地方都市の真ん中にある住宅街。その中に王朝ゆかりの祠堂、赤レンガの聖堂、儒学の学校、丘の上の楼閣、そして韓国でも名の知れた市場が、歩いて回れる範囲にまとまっています。
このコンパクトさのおかげで、ソウルからでも高速鉄道KTXで日帰りができますし、韓屋の宿に1泊すれば、日帰り客が帰ったあとの静かな路地も歩けます。この記事では、ソウルからの行き方、駅から韓屋村までの移動、主な見どころの中身、市が公開している開館時間、食べたいもの、そして日帰りと1泊2日のモデルコースをまとめました。時間などの情報は2026年10月に全州市の公式観光サイトで確認したものです。変わることがあるので、出発前にもう一度確認してください。
全州韓屋村とはどんな場所か
全州市が運営する韓屋村の公式サイトによると、韓屋村は完山区の豊南洞(プンナムドン)と校洞(キョドン)にまたがる約29万8千平方メートルの地区で、700棟を超える韓屋が集まっています。市は「都市の中心部にある韓国で唯一の韓屋地区」と紹介しており、慶基殿(キョンギジョン)、梧木台(オモクデ)、郷校(ヒャンギョ)など約20の文化施設があります。1977年に韓屋保存地区に指定され、2010年には国際スローシティに認定されました。
ただし、いわゆる野外博物館ではありません。同じ公式ページでは地区内の事業所を575と数えていて、通りに並ぶ韓屋の多くはゲストハウス、食堂、カフェ、工房、レンタル店です。太祖路(テジョロ)などの大通りはにぎやかで商業的ですが、一本入った路地や郷校に近い東側は、ぐっと落ち着いた雰囲気になります。なお、2016年からは地区全体が禁煙区域です。
- 宿泊203軒
- 飲食183軒
- その他の販売・レンタル189軒
ソウルから全州への行き方
全州市の観光サイト「Visit Jeonju」では、ソウル方面からの主なルートを3つ紹介しています。到着地はそれぞれ別の場所なので、切符に書かれた駅名・ターミナル名を確かめてから、その先の移動を考えましょう。
- KTXで全州駅へ。市の案内では、ソウルから約1時間40分。全州行きのKTXはソウル駅より龍山(ヨンサン)駅発のほうがずっと本数が多いので、ソウル駅で空席が少なく見えたら龍山駅発で検索し直すのがコツです。KORAILの公式サイトやアプリでは、パスポート情報とメールアドレスだけで予約でき、駅の窓口や券売機でも買えます。予約手順はHaevaのKTXガイドにまとめています。
- 江南方面からはSRT。水西(スソ)駅から全州へ直通するSRTは1日2本だけと案内されています。時間が合わなければ益山(イクサン)駅まで行き、在来線(ムグンファ号・ITX)に乗り換えます。益山〜全州は列車で15〜20分ほどです。
- 高速バス・市外バス。ソウル中心部からは、高速バスターミナルのセントラルシティ(湖南線)または東ソウルターミナルから全州高速バスターミナル行きの高速バスが出ています。市外バスはソウル南部ターミナルから全州市外バスターミナルへ。途中、高速道路のサービスエリアで約15分の休憩が1回あり、全州の高速バスターミナルと市外バスターミナルは徒歩3分ほどの距離に並んでいます。
- 仁川空港から直行。ソウルを経由せず全州へ向かう空港バスがあり、乗り場は第1ターミナル到着階の外にある地方行きバス乗り場12〜13番、第2ターミナルは地下1階交通センターの8番と案内されています。
同じ公式ページには、注意点も2つ書かれています。ひとつは、週末(金〜日)や祝日、祭りの多い5月・9月・10月は座席がすぐ売り切れること。帰りの切符は早めに確保しておきましょう。もうひとつは、券売機で全州(Jeonju)を慶州(Gyeongju)、清州(Cheongju)、晋州(Jinju)と取り違えないこと。アルファベットでは似ていますが、まったく別の地方の都市です。
駅・ターミナルから韓屋村へ
全州駅やバスターミナルは韓屋村のすぐそばではないので、最後の区間は市内バスかタクシーで移動するのが一般的です。市の交通案内によると、韓屋村をはじめとする主な観光地は市内バスの路線で細かく結ばれていますが、系統番号や経路は変わることがあります。駅に着いたら地図アプリで「全州韓屋村」を検索し、表示された市内バスに乗るか、タクシー乗り場を利用するのが確実です。全州市自身はNAVER地図を勧めています。ほかのアプリはHaevaの旅行アプリ記事を参考にしてください。
バスに乗るときのルールも、市の案内に明記されています。前のドアから乗って交通カードをタッチし、降りるときも後ろのドア付近の端末にもう一度タッチします。降車時のタッチをしておくと、30分以内なら別系統の全州市内バスへの乗り換えが2回まで無料になります。タッチを忘れると乗り換え割引が受けられないうえ、次に乗るときに追加料金がかかることもあります。カードの使い方自体はソウルと同じで、詳しくは交通ガイドにまとめています。
荷物があるときは、市の観光案内所を使いましょう。全州駅、バスターミナルの建物内、韓屋村観光案内所(麒麟大路99)、慶基殿旅行者ラウンジにコインロッカーがあり、慶基殿旅行者ラウンジのロッカーは無料と案内されています。案内所の営業は9時〜18時(1時間の昼休みあり)で、英語や日本語の通訳に対応しているところもあります。
主な見どころ早見表
| 場所 | どんなところ | 開館時間・休み(公式) | 所要時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 慶基殿 | 朝鮮王朝を開いた太祖の御真(肖像画)を祀る祠堂。御真博物館もある | 3〜5月・9〜10月 9:00〜19:00/6〜8月 9:00〜20:00/11〜2月 9:00〜18:00。入場は閉館1時間前まで | 1〜1時間半 |
| 殿洞聖堂 | 1914年完成の赤レンガのロマネスク様式の聖堂。韓国最初のカトリック殉教の地 | 開放 9:00〜17:00(教会の事情で変更あり)。ミサが毎日行われる現役の教会 | 20〜30分 |
| 梧木台 | 朝鮮建国にまつわる丘の上の楼閣。韓屋の屋根を見下ろせる | 時間の掲載なし(丘の公園) | 30〜45分 |
| 全州郷校 | 高麗末から続く儒学の学校。イチョウの大木がある | 3〜10月 9:00〜18:00/11〜2月 10:00〜17:00。毎週月曜休み(祝日の場合は翌日) | 30〜45分 |
| 南部市場・夜市 | 豊南門のそばの伝統市場。2階に青年モール | 夜市は金・土 18:30〜23:00(韓屋村公式サイト) | 1〜2時間 |
慶基殿:朝鮮王朝のふるさと
全州が「朝鮮王朝発祥の地」と呼ばれる理由が、この慶基殿です。市の解説によると、1410年、太祖・李成桂(イ・ソンゲ)の肖像画を祀る御容殿が全州・慶州・平壌に置かれました。李氏の本貫(一族のルーツ)が全州だったためで、全州の殿はのちに「慶基殿」と名付けられます。壬辰倭乱(文禄・慶長の役)で焼失し、1614年に再建。国の史跡に指定されています。塀の中には御真を祀る正殿のほか、朝鮮王朝実録を保管した全州史庫、全州李氏の始祖を祀る肇慶廟、そして御真博物館があります。

入場は有料です。2026年10月時点でVisit Jeonjuに掲載されていた全州市民以外の大人の料金は3,000ウォン。毎月最終水曜日の「文化の日」は無料、第4土曜日の「韓服の日」は半額と案内されています。竹林や古い松、石塀に囲まれた境内は、見た目より時間がかかるので、少なくとも1時間はみておきましょう。静かな雰囲気で見たいなら朝早めが向いています。夜には「王との散歩」という歴史解説付きの夜間プログラムも季節限定で行われ、日程はVisit Jeonjuで告知されます。
殿洞聖堂:韓国カトリックの原点
慶基殿から太祖路をはさんだ向かいに建つのが殿洞(チョンドン)聖堂です。湖南地方でもっとも古い西洋式建築のひとつで、市の解説によれば、1791年に尹持忠(パウロ)と権尚然(ヤコボ)が処刑された、韓国最初のカトリック殉教の地でもあります。1891年に教区が設けられ、1908年にソウル・明洞聖堂を設計したポワネル神父の設計で着工、1914年に完成しました。基礎には、取り壊された全州城の城壁の石が使われています。

ここは博物館ではなく、今も信者が通う教会です。Visit Jeonjuでは開放時間を9時〜17時(教会の事情で変更あり)としていて、月〜土の早朝ミサ、火〜金の午前ミサなどの時間も公開しています。ミサの最中に入ったときは、後ろの席で静かにするか、時間をずらして訪れましょう。写真は外の広場から正面を撮るのが一般的で、堂内では掲示に従ってください。
梧木台:韓屋の屋根を見渡す丘
梧木台は、慶基殿から南東へ500メートルほどの低い丘にある小さな楼閣です。市の解説によると、1380年、倭寇を破って都へ戻る途中の李成桂がここで戦勝の宴を開き、新しい国を興す志を示したと伝えられています。朝鮮建国後にこの地に楼閣が建てられ、1900年には高宗の親筆を刻んだ碑も立てられました。歩道橋を渡った先には、太祖の祖先ゆかりの梨木台(イモクデ)があります。

多くの人がここへ上る目的は、韓屋村全体を見渡す眺めです。楼閣のまわりの小道からは、灰色の瓦屋根が連なる村の全景が見え、到着してすぐに位置関係をつかむにも、最後に歩いた道を振り返るにも向いています。市によると、夕方以降は小道に明かりがともり、春は桜、夏はサルスベリの名所としても知られています。
全州郷校:イチョウの大木がある儒学の学校
韓屋村の東の端、にぎやかな通りから数分歩いたところにあるのが全州郷校です。市は高麗末に創建され、朝鮮時代を通じて続いてきた地方の儒学教育機関と紹介しています。孔子の位牌を祀る大成殿と、学生が学んだ明倫堂という伝統的な配置がそのまま残り、境内を覆うイチョウの大木は秋に黄金色に染まります。秋がもっとも人の多い季節で、時代劇のロケ地としても数多く使われてきました。毎週月曜日が休みなので、早見表で確認しておきましょう。
南部市場と夜市
旧全州城の南門で、四つの城門のうち唯一残る豊南門(プンナムムン)の前の道を渡ると、全州を代表する伝統市場、南部市場です。昼間は地元の人が買い物をする普通の市場で、2階には若い店主たちが開いた小さな店やバーが集まる「青年モール」があります。韓屋村公式サイトでは、南部夜市を金曜・土曜の18時30分〜23時と案内しています。また、近くの川沿いでは早朝に路上市場が立ち、Visit Jeonjuはおおむね4時〜10時ごろと紹介しています。
ここで一品だけ選ぶなら、市の市場紹介ページが挙げている南部市場式のコンナムルクッパ(豆もやしスープご飯)を。冷ましたご飯ともやしに、煮干しや昆布でとった熱いスープを何度もかけては戻す「トリョム」という方法で仕上げるのが特徴です。焼き海苔と半熟の落とし卵を添え、薬草を煮出した温かい飲み物「モジュ」と合わせるのが定番とされています。やわらかい食感の地元の腸詰め「ピスンデ」も名物です。
全州ビビンバと、ほかに食べたいもの
全州といえばやはりビビンバです。Visit Jeonjuは全州ビビンバの特徴として、牛骨スープで炊いたご飯、歯ごたえのある全州の豆もやし、黄色い緑豆の寒天「ファンポムク」、伝統製法のコチュジャンと醤油、そして色ごとに盛りつけた30種類以上の具を挙げています。上に牛肉のユッケと生卵の黄身がのることも多く、真鍮の器に入って、おかずと軽いスープと一緒に出てくるのが一般的です。

市の食のページによると、ビビンバの店は旧市街、韓屋村、市役所周辺、そして主要な市場のまわりに集まっていて、老舗の専門店から気軽な食堂まで幅があります。特定の有名店を目指すより、「しっかりした定食にしたい」「昼は手早く」「生の牛肉は避けたい」など、自分の希望で選ぶほうが気楽です。肉や卵を抜いてほしいときの伝え方は、Haevaのベジタリアン・ヴィーガン記事にまとめています。ビビンバ以外では、朝のコンナムルクッパ、市場のピスンデ、韓屋村の路地の食べ歩きなども楽しめます。
韓屋に泊まる
1泊すると、韓屋村の印象はかなり変わります。夕食後には日帰り客が減り、路地や梧木台に明かりがともり、翌朝は郷校や慶基殿の開館時間に合わせて動けます。公式サイトの数字では地区内の宿泊施設は203軒あり、シンプルな部屋から改修した伝統家屋まで選択肢は豊富です。多くの韓屋の宿はオンドル(床暖房)の床に布団を敷くスタイルで、部屋が中庭に面し、壁も薄めです。靴を脱いで上がること、夜は声を控えることを前提に、ベッドの有無、専用バスルーム、冷暖房を予約前に確認しておくと安心です。布団を敷いて寝るところは、日本の旅館に少し似ています。週末と秋の夜から埋まっていきます。
韓服を着て歩くなら
韓屋村では、レンタルした韓服で路地を歩く人をたくさん見かけます。レンタル店も村の事業所のひとつです。着るかどうかはもちろん自由ですが、着るなら、料金に含まれるものと返却時間を確かめ、先に歩くルートを決めておくこと、裾が長いので梧木台の坂道や段差に気をつけることを覚えておきましょう。慶基殿の第4土曜日「韓服の日」の割引も、韓服にちなんだものです。殿洞聖堂は祈りの場なので、撮影は外の広場にとどめるのがマナーです。
ソウルからの日帰りモデルコース
- 朝:龍山駅から早めのKTXで全州へ(約1時間40分)。必要ならロッカーに荷物を預け、市内バスかタクシーで韓屋村へ。
- 昼前:慶基殿と御真博物館を見学し、向かいの殿洞聖堂へ。
- 昼食:太祖路周辺や旧市街で全州ビビンバ。
- 午後:路地を東へ歩いて全州郷校へ(月曜休み)。そのあと梧木台に上って韓屋の屋根並みを一望。
- 夕方:南部市場へ。金・土なら18時30分から夜市、ほかの曜日は市場でコンナムルクッパを。帰りの座席はあらかじめ予約しておき、夜の列車でソウルへ。
1泊2日のモデルコース
- 1日目の午後:到着後、韓屋の宿にチェックイン。閉館前に慶基殿と殿洞聖堂へ。
- 1日目の夜:夕食にビビンバ。暗くなってから梧木台へ。金・土は南部夜市にも。
- 2日目の早朝:南部市場そばの朝の路上市場を歩き、朝食にコンナムルクッパ。
- 2日目の午前:開館に合わせて全州郷校へ。人の少ない東側の路地を歩き、韓屋村公式サイトが周辺スポットとして紹介している丘の上の紫満壁画村(チャマン壁画村)へ。
- 2日目の午後:昼食をとり、太祖路をもう一度歩いてから、列車かバスでソウルへ。
いちばん人気の季節は、イチョウが色づき、市の祭りも重なる秋。その分、切符も売り切れやすくなります。季節ごとの特徴は、Haevaの「韓国旅行のベストシーズン」記事が参考になります。全羅北道のほかの見どころとあわせて全州の位置づけを知りたい方は、全北のページもどうぞ。歩きながら手元で見られる案内がほしい方には、街・食・ルートを1冊にまとめたPDFガイド『全州、街の案内』もあります。
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