ソウルの伝統市場ガイド:広蔵市場から通仁市場まで5か所の楽しみ方

広蔵・南大門・通仁・望遠・京東。ソウルの伝統市場5か所の名物と最寄り駅の出口、現金とカード、屋台での注文のしかたやマナーまで、旅行者向けにまとめました。

発行:Haeva Korea · 2026年10月22日

青空の下、「KWANG JANG MARKET」の大きな看板を掲げたソウル・広蔵市場の正面入口
青空の下、「KWANG JANG MARKET」の大きな看板を掲げたソウル・広蔵市場の正面入口写真: Bgag / CC0, via Wikimedia Commons

ソウルで「地元の日常」をいちばん手軽にのぞける場所といえば、伝統市場です。王宮では朝鮮王朝の歴史に、江南では今の韓国に出会えますが、ソウルの人が実際に食べて、買って、おしゃべりしている場所は市場です。狭い長椅子に見知らぬ人と肩を並べて座り、こんがり焼けたものを指さして注文し、数分後にはそれを頬張っている。そんな時間こそ、旅の記憶に残るものかもしれません。

ソウルには数十の市場がありますが、それぞれ個性がまったく違います。食べ歩きが主役の市場もあれば、生地や韓方薬材の専門市場、近所の人が野菜を買いに来るだけの市場もあります。この記事では、旅行者が楽しみやすい5つの市場、広蔵(クァンジャン)市場、南大門(ナムデムン)市場、通仁(トンイン)市場、望遠(マンウォン)市場、京東(キョンドン)市場を取り上げ、雰囲気、食べたいもの、最寄り駅の出口をまとめました。営業時間と休業日は、ソウル市の公式観光サイト「Visit Seoul」の2026年10月時点の掲載内容に基づいています。市場は小さな個人商店の集まりなので、時間はあくまで目安と考えてください。

5つの市場をひと目で比較

市場名物・特徴最寄り駅こんな人に
広蔵市場ピンデトック(緑豆チヂミ)、麻薬キンパ、ユッケ。2階は生地・韓服鍾路5街駅(1号線)8番出口初めての市場グルメ。屋台通りは夜まで営業
南大門市場衣料・台所用品・高麗人参・お菓子など何でも。カルグクス横丁会賢駅(4号線)5番・7番出口まとめ買いやお土産探し、安い麺ランチ
通仁市場昔の銅銭で払う「お弁当カフェ」、油トッポッキ景福宮駅(3号線)2番出口景福宮や西村散策のあとのお昼
望遠市場タッカンジョン、コロッケ、ホットク、持ち帰りの軽食望遠駅(6号線)2番出口落ち着いた地元市場と漢江ピクニック
京東市場高麗人参、韓方薬材、乾物、青果、海産物祭基洞駅(1号線)2番出口本物の卸売市場の空気を味わいたい人
目的別・ソウルの伝統市場の選び方出典: Visit Seoul(ソウル観光財団)各市場ページ

広蔵市場:まずはここから、定番のグルメ市場

旅行者にいちばん名前が知られているのが広蔵市場です。ソウル市の紹介によると、1905年に開設された韓国初の常設市場。地下鉄1号線・鍾路5街(チョンノオガ)駅8番出口のすぐそばに、屋根付きの通路が碁盤の目のように広がっています。2階には生地の卸売市場や韓服の仕立て屋、古着の売り場がありますが、多くの人のお目当ては1階の屋台です。

名物は、すりつぶした緑豆をたっぷりの油で揚げ焼きにする分厚いチヂミ「ピンデトック(ノクトゥジョン)」。Visit Seoulはほかに、ひと口サイズの「麻薬キンパ」(やみつきになる、という意味の愛称です)、ユッケ、スンデ(韓国式の腸詰め)、トッポッキ、オムク(おでん)を挙げています。チヂミにマッコリを合わせるのは、ソウルの人にとってもおなじみの組み合わせです。日本の居酒屋で枝豆とビールを頼むような感覚で、ぜひ試してみてください。

ソウル・広蔵市場の屋台で、大きな鉄板の上でピンデトックが焼かれ、奥に焼き上がったチヂミが積まれている
広蔵市場で焼かれるピンデトック。焼き上がったものは奥に積まれ、注文が入るともう一度鉄板で温め直してくれます。写真: Rystheguy / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

広蔵市場では、行く曜日と時間がとても大切です。Visit Seoulによると、一般の商店は9時から18時までで日曜定休。一方、屋台が並ぶ「グルメ通り」は毎日9時から23時まで営業しています。夜に楽しめる数少ない伝統市場ですが、週末や夕方はかなり混み合います。公式ページに転載された旅行者の口コミには、混雑やバッグの盗難に触れたものもあるので、スマートフォンや財布はしっかりしまっておきましょう。

広蔵市場の価格は、2023年に韓国国内で話題になりました。同年12月、ソウル市は区や商人会と共に対策を発表しています。メニューに価格と一緒に重さや量を表示すること、代表的な料理の見本を置くこと、覆面調査員による価格と量のチェック、そして現金払いを強要しないことを含むサービス研修などです。座る前に、掲示された値段と量を確認しておくと安心です。

南大門市場:なんでもそろう巨大市場

南大門市場は、ソウルの城郭の南の門・崇礼門(スンネムン)のすぐ東にあります。Visit Seoulは「韓国最大の伝統市場」で1万を超える店舗があると紹介し、建築資材以外はほぼ何でも手に入るとしています。衣料品やアクセサリー、台所用品、輸入菓子、高麗人参、韓方薬まで。多くが卸売なので、狭い通りに驚くほどの数の店がひしめいています。最寄りは地下鉄4号線・会賢(フェヒョン)駅。5番出口から出ると食堂街や観光案内所に近く、Visit Seoulの市場紹介ページでは7番出口も案内されています。

ソウル・南大門市場の通り。縞模様の日よけの下に衣料品の店が並び、頭上には各国の旗が連なり、奥に商業ビルが見える
朝の南大門市場。屋台の後ろにそびえるビルは、フロアごとに扱う品物が分かれた商店街になっています。写真: Adbar / CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

お昼は5番出口近くの「カルグクス横丁」へ。Visit Seoulによると、朝鮮戦争のあとに形づくられた横丁で、麺はすべて手打ち、いりこだしのスープで煮込みます。とにかく狭く、見知らぬ人と肩を寄せ合って食べるのが当たり前で、昼のピーク時は席を見つけるのもひと苦労です。麺かご飯ものを頼むと、もう一方を少しおまけで付けてくれる店が多いのも楽しいところです。

Visit Seoulでは南大門市場の営業日を月曜から土曜、日曜を休みとしており、営業時間は店ごとに異なると記されています。卸売の区画には、かなり早い時間から動き始めるところもあります。困ったときは、会賢駅5番出口から約80メートルの「南大門市場観光案内所」へ。地図や観光情報、通訳などのサービスがあり、日本語にも対応しています。開いているのは10時から19時です。

通仁市場:自分だけのお弁当をつくる

通仁市場は、景福宮の西側に広がる古い街並み「西村(ソチョン)」にある、1本の路地に70〜80軒ほどが並ぶ小さな市場です。始まりは1941年で、今は食料品店や小さな食堂が中心です。旅行者にとっての魅力は「お弁当カフェ(トシラクカフェ)」。韓国語がわからなくても、市場じゅうを少しずつ食べ歩けるしくみです。

通仁市場の総菜店のカウンター。チヂミや焼き魚の皿、ナムルなどのおかずが並び、お弁当カフェ加盟店の表示がある
通仁市場の加盟店。棚の小さな表示が、銅銭で支払えるお弁当カフェの加盟店の目印です。写真: Luvepoli / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

Visit Seoulのガイド(2026年7月時点の情報)によると、流れは次のとおりです。市場の入口から100メートルほど進んだ「顧客サービスセンター」の上階にあるお弁当カフェで、朝鮮時代のお金を模した銅銭「ヨプチョン」を買います。空のお弁当トレーも一緒に渡されます。銅銭は1枚500ウォン相当で、1人なら10枚ほどで十分とのこと。あとは路地を歩き、カフェの表示がある加盟店で銅銭とおかずを交換。カフェに戻って食べます。ご飯や食器、電子レンジがあり、飲み物も銅銭で買えます。

人気なのは、たれで煮るのではなく油と唐辛子で炒める「油(キルム)トッポッキ」、ひき肉を焼いたトッカルビ、キンパ、甘辛いタッカンジョンなど。カフェは11時に開き、午後の早い時間に閉まります。Visit Seoulの掲載では平日15時まで、土曜は16時まで。2つのページのどちらも月曜を休みとしています。日曜の扱いはページによって記載が違うので、できれば火曜から土曜に行くのが確実です。市場自体は7時から21時まで(店により異なる)。地下鉄3号線・景福宮駅2番出口から歩いて500メートルほどです。

望遠市場:漢江のそばの、地元の市場

麻浦区の望遠市場は、ソウルの人が「広蔵市場の人混みを避けたいなら」と友人にすすめる市場です。Visit Seoulによると40年以上続く市場で、20〜30代に人気。韓国観光公社のVisitKoreaも、屋台グルメを楽しむなら広蔵市場の代わりにぴったりだと紹介しています。青唐辛子の天ぷら、コロッケ、ホットク、タッカンジョン、カルグクス、キンパ、トッポッキなどの軽食に加え、薬菓(ヤックァ)や韓菓(ハングァ)といった伝統菓子はお土産にも向いています。

ソウル・望遠市場の鮮魚店。大きなズワイガニや貝、サバ、赤い容器の塩辛が並び、手書きの値札が付いている
望遠市場の鮮魚店。手書きの札には、品名や産地、値段が韓国語で書かれています。写真: Enamoradadecorea / CC0, via Wikimedia Commons

望遠市場は地下鉄6号線・望遠駅2番出口から歩いてすぐ。Visit Seoulでは毎日10時から21時(店により異なる)とされています。VisitKoreaは実用的な点を2つ挙げています。座れる店もあるものの、多くの屋台では立って食べるスタイルであること。そして近くに望遠漢江公園があるので、市場で軽食を買って川辺でピクニックをするのがおすすめだということ。日本の商店街で惣菜を買って公園へ行くような、気軽な楽しみ方です。

京東市場:高麗人参と薬草の香り

清凉里(チョンニャンニ)に近い祭基洞(チェギドン)の京東市場は、ほかの4つとはひと味違います。Visit Seoulは「韓国最大の高麗人参・韓方薬材の専門エリア」と紹介しており、1960年6月に農産物市場として開設され、1985年に拡張されました。生の高麗人参や乾燥した根のほか、青果や乾物、海産物まで並びます。食べ歩きより、韓国の人が何世代にもわたって食材や薬材を買ってきた現場を見る場所です。

ソウル・京東市場の韓方薬材店。乾燥した薬草や実、花、根が袋ごとに並び、それぞれに手書きのハングルの札が立っている
京東市場に並ぶ乾燥した薬草や実、花茶。袋ごとに韓国語の名前を書いた札が立っています。写真: Gaël Chardon / CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

地下鉄1号線・祭基洞駅の2番出口から約270メートル。Visit Seoulの掲載では毎日8時から18時ですが、隔週の日曜日と秋夕(チュソク、旧暦8月15日の名節)は休みです。いちばん活気があるのは午前中です。

市場では現金?カード?

答えは「両方持っていく」です。VisitKoreaのショッピングガイドによると、韓国のほとんどの店では海外発行のクレジットカードが金額に関係なく使えますが、伝統市場や露店など一部は現金のみの場合があります。望遠市場についても、VisitKoreaは多くの屋台でカードが使える一方、使えない店もあると書いています。小さな軽食の屋台や青果店では現金を求められることもある、と考えておくと安心です。

1,000ウォン札と5,000ウォン札を何枚か持っておくと、回転の速い持ち帰りの屋台で特に便利です。事前に確かめたいときは「カドゥ テナヨ?」(カード使えますか?)、値段は「オルマエヨ?」(いくらですか?)で通じます。ATMや交通カードを含めたお金の話は、お金のガイド記事にまとめています。

屋台での注文のしかた

市場の屋台は、どこもだいたい同じしくみです。店先に料理が並び、値段はボードや手書きの札に書かれていることが多く、席はカウンターを囲む長椅子や丸椅子。食べたいものを指さして「イゴ チュセヨ」(これください)と言い、指で数を示せば十分です。座りたいときはお店の人と目を合わせて長椅子を手で示し、持ち帰りなら「ポジャンヘ チュセヨ」(包んでください)と伝えましょう。

座って食べる屋台では、食べ終わってから出してくれた人に直接払うのが一般的です。持ち帰りの屋台では注文と同時に払います。チヂミなどの揚げ物は作り置きを注文後に温め直すことが多いので、数分待つのは普通のこと。キムチや玉ねぎの漬物などのおかずは料理と一緒に出てきます。韓国の飲食店と同じく、チップは不要です。

お店の人に喜ばれるマナー

どれも厳しい決まりではありませんし、お店の人も韓国語を話さない旅行者には慣れています。笑顔と「カムサハムニダ」(ありがとうございます)、それに少しの余裕があれば十分です。日本と似ているようで少し違う韓国の日常のマナーは、マナーの記事で詳しく紹介しています。

行くならこの時間帯

市場営業時間休みおすすめの時間
広蔵市場商店 9:00〜18:00、グルメ通り 9:00〜23:00商店は日曜休み、グルメ通りは毎日営業平日の昼前、または夜ごはん
南大門市場店により異なる。早朝から動く区画も日曜平日の午前、そのまま麺ランチ
通仁市場市場 7:00〜21:00、お弁当カフェは11時〜午後の早い時間お弁当カフェは月曜休み火〜土の11時〜13時ごろ
望遠市場毎日 10:00〜21:00店により異なる夕方前、そのあと漢江公園へ
京東市場毎日 8:00〜18:00隔週日曜、秋夕平日の午前
Visit Seoulに掲載された営業時間と休業日(2026年10月時点)。店ごとに異なります。出典: Visit Seoul(ソウル観光財団)

全体的な傾向としては、平日の朝から昼前がいちばん落ち着いていて、週末の午後はどこも混雑します。12時から13時は会社員で麺の横丁がいっぱいになるので、少し早めか遅めに行くのがコツです。旧正月(ソルラル)や秋夕の連休には、家族経営の店の多くが数日休みますし、京東市場は秋夕を休業日としているので、連休中に市場を予定に入れるなら事前に確認を。夏は屋根のある市場が午後には蒸し暑くなるので、早い時間がおすすめです。

ソウル観光に市場を組み込むなら

市場は近くの観光地と組み合わせると効率よく回れます。通仁市場は景福宮と西村散策のあとのお昼に。広蔵市場は宗廟や清渓川(チョンゲチョン)に近く、私たちのソウル3日間プランでは「市場から南山へ」の1日の出発点にしています。南大門市場は崇礼門や徳寿宮、明洞(ミョンドン)まで歩ける距離。望遠市場は麻浦(マポ)での午後に組み込み、最後は漢江で。京東市場は、観光バスではまず見られないソウルの一面を見たい人に。

ベジタリアンの方やアレルギーのある方は、注文前に確認を。チヂミやマンドゥには肉や魚介が入っていることがあり、スープはいりこだしが多いからです。ピンデトック、キンパ、トッポッキ、ホットクに何が入っているかは料理ページで解説していますし、PDFガイド『Korea, The Basics』では外食、お金、移動をまとめて紹介しています。あとはおなかを空かせて、お札を何枚かポケットに入れて、その日のお昼は市場に決めてもらいましょう。

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