江陵(カンヌン)旅行ガイド:ソウルから日帰り・1泊2日で海辺の町へ
KTXでソウルから約2時間の江陵。鏡浦台と鏡浦湖、海水で固める草堂豆腐、烏竹軒、注文津港、正東津の日の出、端午祭まで、行き方とモデルプランを紹介。

ソウルの街歩きにひと区切りついたら、次は海の見える町へ。江原道(カンウォンド)の東海岸にある江陵(カンヌン)は、2017年12月にKTX江陵線が開通してから、ソウルからいちばん気軽に行ける海辺の町のひとつになりました。朝の列車で出発して、詩に詠まれてきた楼閣から湖を眺め、海水で固めたおぼろ豆腐を食べ、海沿いのカフェでひと休みしても、夜にはソウルに戻れます。1泊すれば、正東津(チョンドンジン)の日の出や、注文津(チュムンジン)の港町の朝も加えられます。
この記事では、ソウルからの行き方(KTXと高速バス)、現地での移動、主な見どころがどんな場所なのか、そしてそのまま使える日帰りプランと1泊2日プランをまとめました。開館時間や所要時間は、江陵市の観光公式サイトと各施設の公式サイトで確認したもので、出典は末尾に載せています。運賃や入場料は変わりやすいため、ここでは載せていません。予約時に確認してください。
江陵のざっくり地図
江陵は太白(テベク)山脈と東海(トンヘ)にはさまれた町です。江陵駅やバスターミナルがある市街地は海から少し内陸にあり、旅行者が目指す場所は海岸線に沿って細長く並んでいます。市街地の北約6kmに鏡浦(キョンポ)湖・鏡浦台・鏡浦海水浴場がまとまったエリア、その南に安木(アンモク)海岸のコーヒー通り、市の北端に注文津港、南の海岸に正東津という配置です。歴史的な邸宅である烏竹軒(オジュッコン)と船橋荘(ソンギョジャン)は、鏡浦湖の少し内陸側にあります。
この並び方がプランづくりのポイントです。鏡浦・烏竹軒・船橋荘・草堂(チョダン)・安木は互いに近く、1日で無理なく回れます。一方、注文津と正東津は市の北端と南端にあるので、短い旅ならどちらか一方に絞るのがおすすめです。江陵は2018年冬季オリンピックの開催都市のひとつでもあります。さらに北の束草(ソクチョ)や雪岳山(ソラクサン)を含めた江原道全体については、江原道のページと束草・雪岳山の記事も参考にしてください。
ソウルからの行き方:KTXか高速バス
いちばん速いのはKTX江陵線です。江陵市の観光サイトによると、開通は2017年12月21日で、所要時間はソウル駅から約2時間、ソウル北東部の清涼里(チョンニャンニ)駅から約1時間半。停車駅の数によって列車ごとに時間は変わるので、乗る便の時刻表で確認してください。乗車券は1か月前から、駅の窓口、KORAILの公式サイト、アプリ「コレイルトーク」で買えます。週末や夏休みは朝夕の便利な列車から埋まっていくので、往復とも早めに押さえておくと安心です。予約のしかたや座席の種類はKTXガイドで詳しく説明しています。
もうひとつの手段が高速バスです。江陵市が案内しているソウル側の乗り場は、地下鉄3・7・9号線の高速ターミナル駅にあるソウル高速バスターミナルと、2号線の江辺(カンビョン)駅にある東ソウル総合ターミナルの2か所。早朝から夜まで運行していて、1列4席の一般バスのほか、1列3席でゆったりした優等バスやプレミアムバスも選べます。市のページには所要時間の記載がなく、高速道路の混み具合で大きく変わるため、予約時に運行会社のサイトで予定時間を確認し、金曜夜や連休は余裕をみてください。
飛行機で到着してそのまま海へ向かうなら、仁川(インチョン)空港と金浦(キンポ)空港から江陵行きの直通リムジンバスもあります。市のページでは仁川空港から約3時間半、1日の便数は限られています。
現地での移動:路線バス・タクシー・徒歩
江陵の路線バスは主要道路を走り、市街地と海岸や郊外を結んでいます。ただ、市自身も認めているように、停留所の英語表示は少なく、初めての旅行者には少し使いにくいのが実情です。路線や到着予定は江陵市バス情報システム(bis.gn.go.kr)で確認でき、公共交通の経路が出る地図アプリを併用すれば十分に乗りこなせます。支払いはT-moneyなどの交通カードで。市の案内では、カード利用者は降車時に端末にタッチし、40分以内に乗り継げば、バス同士の乗り換えが1回無料になります。
タクシーは台数が多いメーター制で、現金とカードのどちらでも払えます。烏竹軒・船橋荘・草堂・鏡浦のような近距離の移動なら、バスを待つよりタクシーのほうが時間を節約できることも多いでしょう。江陵市は外国人観光客向けのツアータクシーも運営していて、江陵駅の観光案内所などで事前に予約すると、指定した言語を話すドライバー、または通訳サービスを使えるドライバーが来てくれます。湖のまわりは、歩くかレンタサイクルで回るのが気持ちのいい移動手段です。
鏡浦台と鏡浦湖
鏡浦台(キョンポデ)は、鏡浦湖の西岸の小高い丘に建つ木造の楼閣です。古くから「関東八景」のひとつに数えられてきた東海岸を代表する眺めの名所で、市の観光サイトによれば、朝鮮時代の儒学者・栗谷李珥(ユルゴク・イイ)が10歳のときにここを題材に文章を書いたと伝えられています。現在、楼閣は国の宝物に、楼閣と湖を合わせた一帯は名勝に指定されています。湖畔の道から石段を上がり、湖越しに海の方角を眺めてみてください。ここからは月が五つの姿で見える、という古い言い伝えも市のサイトで紹介されています。
鏡浦湖は砂州によって海から切り離された潟湖です。江陵市の観光サイトによると、かつてはずっと大きな湖でしたが、土砂がたまって周囲は約4km、水深は1〜2mほどになりました。湖を一周する平らな遊歩道があり、近くでは自転車も借りられます。松林や湿地公園を抜けながら、振り返れば鏡浦台が見える散歩道です。春の桜まつりの時期は全国から人が集まり、初夏には湖畔の湿地に蓮の花が咲きます。

鏡浦海水浴場と海沿いの散歩道
鏡浦海水浴場は、楼閣から約1km、砂州をはさんだ海側にあります。江陵でいちばん名前の知られた海水浴場で、7〜8月は特に混み合い、市の観光サイトでも、夏に若い人が集まる浜として紹介されています。シーズンオフは広々として静かで、砂浜の後ろには松林、海沿いの道には飲食店が並びます。例外は元日で、初日の出を見に大勢の人が訪れるため、市はこの時期の宿の早めの予約をすすめています。
南へ歩くと鏡浦海水浴場は江門(カンムン)海岸につながり、市の紹介によれば、こちらは比較的落ち着いた、地元の人がよく来る浜です。江門からは「タンジェボン散策路」と呼ばれる約3kmの松林の道が安木海岸まで続いています。午後に時間があって歩きやすい靴なら、湖とコーヒー通りを歩いてつなぐのも楽しい方法です。
草堂:海水で固めるおぼろ豆腐
湖のすぐ南にある草堂洞(チョダンドン)には、「草堂スンドゥブ村」と呼ばれる豆腐料理店の集まりがあります。ここの豆腐の特徴は凝固剤です。韓国文化広報院(KOCIS)の記事によると、一般的な豆腐はマグネシウムやカルシウムの凝固剤で固めますが、草堂では東海の海水そのものを使います。この海域の海水はミネラルが豊富で、煮詰めて濃くしなくても豆乳が固まるのだそうです。日本の豆腐づくりでいう「にがり」の代わりに、海の水をそのまま使うイメージです。こうしてできるスンドゥブ(おぼろ豆腐)は、ふるふるとやわらかく、そのままか少しの醤油で食べるほか、赤く辛いチゲにもなります。
村の名前は、草堂を号とした朝鮮時代の学者・許曄(ホ・ヨプ)に由来するとよく言われますが、同じ記事はこれを言い伝えとして扱い、豆腐づくりが広がったのは主に朝鮮戦争後、豆腐を作って売り歩いた家々からだと説明しています。豆腐は早朝に作られるため、朝食か早めの昼食で訪れるのが定番です。すぐそばには『洪吉童伝』の作者・許筠(ホ・ギュン)と、その姉で詩人の許蘭雪軒(ホ・ナンソルホン)を記念する公園もあります。スンドゥブチゲがどんな料理かは、料理ページで紹介しています。
安木海岸のコーヒー通り
鏡浦から南へ下った安木(アンモク)海岸には、海に面したカフェが並び、江陵市の観光サイトはここを市の「コーヒー通り」として紹介しています。市の説明では、始まりは海を眺めながら飲む自動販売機のコーヒーで、1990年代に腕のいい焙煎士やバリスタが移り住んだことで、全国から人が集まるようになりました。いまは個人経営のカフェとチェーン店が隣り合い、コーヒーフェスティバルや専門店の広がりとともに、江陵は「韓国のコーヒーの都」を名乗るようになっています。決まった目的地はないので、海沿いを歩いて、海の見える席を選び、ゆっくり過ごすのがいちばんです。公共交通なら市外バスターミナルから約40分と市は案内しています。注文のしかたや席のマナーは、韓国のカフェ文化の記事が参考になります。
烏竹軒:栗谷と申師任堂の生家
烏竹軒(オジュッコン)は、韓国の人なら財布の中で毎日のように目にしている場所です。朝鮮王朝を代表する儒学者・栗谷李珥と、その母で書画に優れた申師任堂(シン・サイムダン)がここで生まれ、2人はそれぞれ5,000ウォン札と50,000ウォン札の肖像になっています。名前は、敷地のまわりに生える黒い竹(烏竹)に由来します。小さな本体の建物は朝鮮時代前期の上流住宅の離れで、当時の建築と、木組みの様式が移り変わっていく過程を伝える貴重な例とされています。
敷地内には、栗谷を祀る文成祠、烏竹軒本体、申師任堂とその一族の作品を展示する栗谷記念館、江陵市立博物館などがあります。江陵市の案内では観覧時間は9時〜18時、入場(チケット販売)は17時まで。元日・旧正月(ソルラル)・秋夕(チュソク)には屋内展示館の一部または全部が休館となりますが、公式ページ同士で書き方が少し異なるため、祝日に訪れる場合は事前に確認してください。毎年10月25・26日には栗谷を偲ぶ祭礼が行われます。

船橋荘:今も人が暮らす両班の屋敷
烏竹軒から車ですぐの船橋荘(ソンギョジャン)は、朝鮮時代後期の両班(ヤンバン)の屋敷で、約300年にわたって元の姿をよく保ってきました。屋敷側の説明では、世宗大王の兄・孝寧大君の11代目の子孫にあたる李乃蕃(イ・ネボン)が最初に建て、その後の世代が少しずつ増築して、典型的な「99間(カン)」の上流住宅になったといいます。「間」は柱4本で囲まれた空間の単位です。国家民俗文化遺産に指定され、現在も個人が所有しています。
敷地内では、かつて数千冊の書物を収めていた楼閣風の建物「悦話堂(ヨルファダン)」と、入口の人工の池の上に建ち、壁がすべて格子戸でできた東屋「活来亭(ファルレジョン)」に注目してください。屋敷の公式サイトによると、観覧時間は夏季が9時〜18時、冬季が9時〜17時。韓屋に泊まれる「韓屋ステイ」も行っているので、歴史ある家で一夜を過ごしたい人は検討してみてもいいでしょう。

注文津港と水産市場
市の北端にある注文津(チュムンジン)は、東海岸を代表する漁港のひとつです。江陵市によると、ここを拠点にする漁船は約350隻。寒流と暖流が出合う東海で、イカ、イカナゴ、スケトウダラなどが主な水揚げです。港の隣には水産市場があり、船から揚がったばかりの魚が並び、市は手頃な刺身をこの港の魅力として紹介しています。バスターミナルが近く、北へ少し歩けば注文津海水浴場と注文津灯台もあります。
並ぶ魚は季節やその日の水揚げで変わるので、買う前に値段を確かめてから決めましょう。K-POPファンと一緒なら、注文津の香湖(ヒャンホ)海岸にある、BTSのアルバムのブックレットに登場した浜辺のバス停も、市の観光地リストに載っている写真スポットです。

正東津:日の出と海辺の駅
江陵の南の海岸にある正東津(チョンドンジン)は、その位置が名前の由来です。市の説明によると、かつての都・漢陽(現在のソウル)の正門である光化門の「真東(正東)」にあたる港という意味。韓国で最も知られた日の出の名所のひとつで、特に元日は多くの人でにぎわいます。1995年のドラマ『砂時計』のロケ地として有名になり、浜の公園もドラマにちなんで「砂時計公園」と名付けられました。正東津駅はまさに浜辺に建っていて、市は世界でも海に最も近い駅のひとつとして紹介しています。江陵と正東津の間には列車が走っているので、車がなくても訪れられます。
浜の南には、天然記念物に指定された海岸段丘の上を歩く海岸遊歩道「正東・深谷パダブチェキル」があり、正東津と深谷(シムゴク)港を結んでいます。市の案内では、正東津海水浴場の遊泳期間は7〜8月です。日の出を見るなら、前日から正東津に泊まるのがいちばん確実です。日の出の時刻は日付ごとに確認しておきましょう。

江陵端午祭
日程が合えばぜひ組み込みたいのが、江陵端午祭(カンヌンダノジェ)です。1967年に国の無形文化遺産に指定され、2005年にユネスコから認定を受け、現在は「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載されています。日本の端午の節句は新暦の5月5日ですが、江陵端午祭は旧暦で行われます。旧暦4月の神酒づくりや大関嶺(テグァルリョン)からの神木の奉迎に始まり、本祭は旧暦5月5日の端午を中心とした時期。新暦ではおおむね5月下旬から6月ごろにあたります。会場の中心は市街地を流れる南大川(ナムデチョン)の河川敷で、巫俗の儀礼、仮面劇「官奴仮面劇」、民俗遊戯、そしてユネスコが韓国最大の野外市場と紹介する「乱場(ナンジャン)」が開かれます。
2026年の祭りは6月に開催されました。2026年10月時点で、公式サイトには2027年の日程はまだ発表されていません。端午祭に合わせて旅を計画するなら、公式サイト(danojefestival.or.kr)で最新情報を確認してください。
見どころ一覧と所要時間の目安
| 場所 | どんな場所か | 行き方 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 鏡浦台・鏡浦湖 | 湖を見下ろす歴史ある楼閣と、周囲約4kmの遊歩道 | 市街地の北約6km。路線バスかタクシー | 1〜1.5時間 |
| 鏡浦海水浴場 | 江陵で最もよく知られた浜。7〜8月は混雑 | 鏡浦台から徒歩、約1km | 30分〜1時間 |
| 草堂スンドゥブ村 | 海水で固めたおぼろ豆腐の店が集まる | 鏡浦湖のすぐ南。徒歩か短距離タクシー | 食事で1時間 |
| 安木海岸コーヒー通り | 海に面したカフェが並ぶ通り | 路線バス(市外バスターミナルから約40分)かタクシー | 1〜2時間 |
| 烏竹軒 | 栗谷と申師任堂の生家、市立博物館 | 市街地から路線バスかタクシー。bis.gn.go.krで確認 | 1〜1.5時間 |
| 船橋荘 | 蓮池の上の東屋を持つ朝鮮後期の屋敷 | 烏竹軒や鏡浦湖からタクシーですぐ | 45分〜1時間 |
| 注文津港・水産市場 | 東海岸の主要漁港と市場 | 市の北端へ路線バスかタクシー | 食事込みで1.5〜2時間 |
| 正東津 | 日の出の浜、海辺の駅、海岸段丘の遊歩道 | 江陵駅から列車 | 半日 |
| 江陵端午祭(開催時期のみ) | 旧暦5月のユネスコ無形文化遺産の祭り | 市街地の南大川 | 半日以上 |
ソウルからの日帰りプラン
移動に時間を取られないよう、鏡浦周辺だけで組んだプランです。
- 早朝:ソウル駅か清涼里駅から朝のKTXで江陵へ。帰りの列車も同時に予約しておく。
- 午前:タクシーかバスで烏竹軒へ(9時開館)。本体の建物と記念館で1時間ほど。
- 昼前:近くの船橋荘で屋敷と活来亭を見学。
- 昼食:草堂スンドゥブ村でおぼろ豆腐。
- 午後:鏡浦台まで歩き、湖畔の遊歩道を通って鏡浦海水浴場へ。
- 夕方:タクシーで安木海岸へ移動し、海を見ながらコーヒー。体力に余裕があればタンジェボンの松林の道を歩いても。
- 夜:江陵駅からKTXでソウルへ。
1泊2日プラン
1泊できるなら、1日目はゆっくり回り、2日目は海岸の北端か南端のどちらかへ。
- 1日目:日帰りプランをゆったりしたペースで。草堂の許筠・許蘭雪軒記念公園や、夕方の湖畔散歩も加える。宿は鏡浦周辺か江陵駅周辺に。
- 2日目・案A(日の出):前夜は正東津に泊まり、浜で日の出を見て、パダブチェキルを一部歩いてから列車で江陵へ戻る。
- 2日目・案B(港町):朝から北の注文津へ。港と水産市場を歩いて海鮮の昼食をとり、午後の列車に合わせて江陵駅へ戻る。
- 日程が合えば、どちらかの日を南大川の端午祭にあてる。
出発前のチェックリスト
- 週末、7〜8月、桜の季節、元日はKTXが混むので早めに予約を。
- 烏竹軒:9時〜18時、入場は17時まで。元日・旧正月・秋夕は屋内展示館が休館になる場合あり。船橋荘:夏季9時〜18時、冬季9時〜17時。
- バス停は英語表示が少ないので、地図アプリやbis.gn.go.krを活用し、乗り換え用に交通カードを用意する。
- 江陵は冬でも韓国の中では比較的穏やかですが、内陸の大関嶺はかなり冷え込みます。12〜2月の旅なら冬の韓国の記事も参考に。
- ほかのソウル発の小旅行は、ソウルからの日帰り旅行の記事にまとめています。
コメント
コメントするにはメールアドレスの確認が必要です — ワンクリックで完了します。
まだコメントはありません。
