韓国のカフェ文化ガイド:注文の流れからカフェめぐりのエリアまで

なぜ韓国はカフェだらけなのか。カフェの種類、ソウルのカフェめぐりエリア、キオスクと呼び出しベルの使い方、伝統茶房やピンスまで、初めての方向けにまとめました。

発行:Haeva Korea · 2026年10月19日

ソウル・仁寺洞の伝統茶房の店内。むき出しの木の梁に照明や陶器の飾りが吊るされている
ソウル・仁寺洞の伝統茶房の店内。むき出しの木の梁に照明や陶器の飾りが吊るされている写真: iloveconor.com / CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

韓国の街を歩いていると、カフェの多さに驚かされます。角を曲がるたびにカフェがあり、通りをはさんで向かい合っていることも珍しくありません。テイクアウト専用の小さな店もあれば、倉庫を丸ごと改装した大型店、瓦屋根の古い韓屋(ハノク)を生かした店もあります。日本にもおしゃれなカフェはたくさんありますが、韓国では「カフェめぐり」そのものが旅の目的になるほどです。

この記事では、韓国でカフェがなぜこれほど身近なのか、どんな種類のカフェがあるのか、ソウルでカフェめぐりを楽しむならどのエリアか、そして注文から返却までの流れを、韓国で暮らす私たちの目線でまとめました。伝統茶の茶房(タバン)、メニューでよく見かけるデザート、知っておくと気持ちよく過ごせる暗黙のルールも紹介します。価格は店によって大きく違い、変わることも多いので、あえて載せていません。

なぜ韓国にはこんなにカフェが多いのか

理由はコーヒーの人気だけではありません。韓国のカフェは「家の外にあるリビング」のような存在です。友人同士は家に招くよりカフェで会うことが多く、恋人たちは午後をまるごとカフェで過ごし、会社員はちょっとした打ち合わせに使い、学生やリモートワーカーはノートパソコンを広げて何時間も勉強や仕事をします。韓国政府の公式ポータル Korea.net に掲載された寄稿記事でも、カフェで勉強するのが好きな人を指す「カゴンジョク(카공족)」という俗語が紹介されています。勉強部屋にも、オフィスにも、待ち合わせ場所にもなるからこそ、一つの街にこれだけ多くのカフェが成り立つのです。

カフェは一か所に集まる傾向もあります。韓国観光公社(VisitKorea)は、カフェが集まる場所が「カフェ通り」と呼ばれることがあると紹介し、その例として大邱(テグ)の前山(アプサン)カフェ通りを挙げています。チェーン店と個人経営の店が混在する通りです。ソウルにもこうしたエリアがいくつもあり、エリア自体が観光地になっているところもあります。個人経営のカフェは内装に力を入れていることが多く、飲み物と同じくらい「空間」を目当てに訪れる人が少なくありません。

伝統も負けていません。ソウル市の公式観光サイト Visit Seoul は、韓国の伝統茶の人気が高まるとともに、伝統家屋を改装した韓屋カフェがトレンドになったと紹介しています。同じ日の午後に、元工場のカフェで丁寧に淹れたラテを飲み、障子窓のある部屋でナツメ茶を味わう、そんな過ごし方ができるのがソウルの面白さです。

韓国のカフェ、主な種類

カフェの種類どんなところかこんな人・場面に
韓屋カフェ伝統家屋を生かしたカフェ。瓦屋根や木の梁、小さな中庭、床に座る席があることも雰囲気や写真を楽しみたい人、古いソウルの街並みと一緒に
ベーカリーカフェパンやケーキが並び、店内で焼いていることも多い。トレーとトングで自分で取るスタイル朝食や軽い昼食、何種類かシェアしたいとき
デザートカフェピンス、ケーキ、伝統菓子のアレンジなど、看板メニューに特化午後のおやつ、夏ならピンス
テーマカフェキャラクター、ゲーム、個性的な内装など、はっきりしたコンセプトがある。ルールは店ごとファンの方、家族連れ、一度きりの体験に
スタディカフェ時間単位で机を借りる静かな有料スペース。飲み物はおまけ試験勉強をする地元の人向け。おしゃべりには不向き
伝統茶の茶房ナツメ茶、生姜茶、双和茶などの伝統茶を、米菓子などと一緒に。落ち着いた照明の静かな空間仁寺洞や益善洞でのひと休み、カフェインを控えたいとき
韓国のカフェの種類と楽しみ方の目安出典: Visit Seoul、VisitKorea(韓国観光公社)をもとに Haeva がまとめたもの

旅行者がまず行ってみたくなるのは、やはり韓屋カフェでしょう。低い軒、木の格子戸、中庭の上に見える空。床に座る席がある店では、家に上がるときと同じように、段を上がる前に靴を脱ぎます。日本の座敷に慣れている方なら、戸惑うことはほとんどないはずです。

ベーカリーカフェでは、韓国の人たちのパン好きがよくわかります。トレーとトングを取って棚から好きなパンを選び、飲み物と一緒にレジで会計するのが一般的な流れです。デザートカフェは一つの看板メニューに力を入れている店が多く、夕方前や週末は特に混み合います。

テーマカフェは、キャラクターグッズやゲームの世界観を再現した店から、動物と触れ合える店までさまざまです。動物のいるカフェを考えている場合は、動物がどう扱われているか、どんなルールがあるかを事前に確かめ、少しでも気になることがあれば無理に入らないのがいちばんです。最後のスタディカフェは、外から見るとカフェのようですが、実際は「お金を払って使う静かな自習室」に近い場所です。コーヒーを飲みながらおしゃべりしたい旅行者向けではないので、旅の途中で使うことはまずないでしょう。

ソウルでカフェめぐりを楽しむなら、この3エリア

益善洞(イクソンドン)。鍾路3街(チョンノサムガ)駅の裏手にある、韓屋の路地が碁盤の目のように広がる小さなエリアです。Visit Seoul によれば、最寄りは4番出口。今ではカフェやレストラン、小さなショップがぎっしり並んでいます。Visit Seoul は益善洞を「ソウル初の計画的な住宅地」と紹介しており、1920年代初め、開発業者の鄭世権(チョン・セグォン)が広い土地を買い取り、小さな韓屋に分けて韓国人に販売したのが始まりだそうです。大通りからは入口が見えにくいので、大きな看板ではなく細い路地を目印に探してみてください。

聖水洞(ソンスドン)。ソウルの東側にある聖水は、古い工場や手作り靴の工房が集まる地域として知られていました。VisitKorea は、練武場キル(ヨンムジャンギル)周辺がおしゃれなカフェと文化の街として生まれ変わった一方で、自動車整備工場や印刷工場、手作り靴の店が今も営業していると紹介しています。倉庫や工場を改装した大型カフェ、デザインショップ、ポップアップストアが、現役の整備工場と隣り合っている不思議な風景が魅力です。週末はかなり混むので、行けるなら平日がおすすめです。

延南洞(ヨンナムドン)。弘大入口(ホンデイック)駅の近く、京義線(キョンウィソン)森の道公園に沿って広がるエリアです。Visit Seoul によると、この全長6.3kmの公園はかつて放置された線路跡でした。延南洞の区間はニューヨークのセントラルパークにちなんで「ヨントラルパーク」と呼ばれ、大型チェーンより小さなカフェやおしゃれな店が多く、奥まった路地に点在しているのが特徴だそうです。天気のいい夕方に飲み物を買って、芝生でのんびりするのもいい過ごし方です。

短い旅程にこれらのエリアを組み込みたい方は、「初めてのソウル3日間」の記事も参考にしてください。延南洞を弘大と組み合わせる回り方を紹介しています。益善洞は仁寺洞のすぐ近くなので、同じエリアの王宮見学とあわせて回るのが便利です。

注文から返却までの流れ

韓国のカフェは、ほぼすべてがカウンターで先に注文するスタイルです。席に座って待っていても、メニューを持ってきてくれることはありません。日本のセルフ式カフェと似ていますが、細かいところが少し違います。一般的な流れは次のとおりです。

フレーズを一つだけ覚えるなら、持ち帰りの「ポジャンへ ジュセヨ(포장해 주세요)」がおすすめです。店内で飲む場合は、席を指さすだけでも十分伝わります。ソウル中心部のバリスタは外国人客に慣れていますし、メニュー表を指さす方法はどこでも通じます。

店内か持ち帰りかを聞かれるのには理由があります。環境部の食品接客業向けのルールでは、店内で飲む客に使い捨てカップを出すことは認められておらず、テイクアウトは対象外とされています(環境部カードニュース、2022年4月14日)。その後、2023年11月には紙コップの店内使用が再び認められましたが、使い捨てのプラスチックカップは引き続き店内では使えないと説明されています(大韓民国政策ブリーフィング、2023年11月13日)。このルールはこれまで何度か変わってきたので、実際には「店内と言えばグラスやマグで出てくる」と覚えておけば十分です。途中で持ち帰りたくなったら、店のマグのまま出ていかず、店員さんにテイクアウト用カップへの移し替えを頼みましょう。

伝統茶を味わう茶房

仁寺洞の茶房で木のトレーに置かれた韓国茶のセット。急須、湯冷まし、薄い色のお茶が入った小さな茶碗
仁寺洞の茶房で、急須と湯冷ましを添えて出されたお茶。茶葉のお茶のほか、果実や根、穀物から作るお茶も豊富です。写真: Ride Around the World / CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

カフェ文化のもう一つの顔、ゆったりとした伝統茶の茶房もぜひ体験してみてください。伝統茶を味わうなら、まずは仁寺洞(インサドン)へ。Visit Seoul は仁寺洞を、韓国の工芸品や伝統茶、寺院料理などが集まる街として紹介し、飲食店や茶房にも韓国らしさがにじんでいると書いています。隣の益善洞にも韓屋の茶房があります。

日本の方が意外に感じるのは、韓国の「お茶」の多くが茶葉を使っていないことかもしれません。VisitKorea に掲載されている仁寺洞の茶房の紹介を見ると、生薬を煮出したとろりと温かい双和茶(サンファチャ)、ナツメ茶(テチュチャ)、生姜茶(センガンチャ)、そして甘酸っぱい赤い実を使った五味子茶(オミジャチャ)などが並んでいます。カボチャで作った甘い米の飲み物「ホバクシッケ」や、米菓子「ユグァ(油菓)」を出す店もあります。お茶に添えられることの多いはちみつ菓子「ヤックァ(薬菓)」もぜひ試してみてください。カフェインを含まないものが多いので、夕方の休憩にもぴったりです。

茶房はカフェよりもゆったりとして静かです。カウンター注文ではなく席で注文を取ってくれる店も多く、座布団に座る床席の店もあります。お茶を飲み終えたからといってすぐに席を立つ必要はありません。日本の甘味処で過ごすような感覚で、のんびり楽しんでください。

名前を覚えておきたいデザート

金属の器に盛られた細かいかき氷の上に、甘く煮た小豆がたっぷりのったパッピンス
定番のパッピンス。細かく削った氷に甘い小豆をのせたもの。夏になると、果物や餅、クリームをたっぷりのせたピンスも並びます。写真: National Institute of Korean Language (국립국어원) / CC BY-SA 2.0 KR, via Wikimedia Commons

夏のカフェで必ず目にするのがピンス(빙수)です。VisitKorea はピンスを、さまざまなトッピングをのせた韓国の伝統的なかき氷のデザートと紹介しており、定番は甘く煮た小豆をのせたパッピンスです。フルーツのピンスも同じくらい人気で、毎年新しい種類が登場します。日本のかき氷に近いデザートですが、一皿の量が多く、二、三人でそれぞれスプーンを持って同じ器からつつくのが普通です。

カフェのメニューでほかに見かける名前も紹介しておきます。インジョルミ(인절미)はきな粉をまぶした柔らかい餅で、ピンスのトッピングやトーストによく使われます。ミスッカル(미숫가루)は穀物を炒って粉にしたもので、ラテのようなシェイクにして飲みます。ユジャ茶(유자차)は柚子の砂糖漬けをお湯に溶かした甘いお茶です。ヤックァなどの伝統菓子を今風のデザートにアレンジしているカフェも増えています。食物アレルギーのある方は、こうしたメニューにナッツ、大豆、乳製品、小麦がよく使われているので、注文前に確認しておくと安心です。

カフェで気持ちよく過ごすための暗黙のルール

韓国のカフェは基本的に気楽な場所で、旅行者が守るべき決まりは、それぞれの店が掲示しているもの以外に特にありません。とはいえ、次のような習慣を知っておくと、地元の人たちに自然になじめます。

営業時間もカフェによってまちまちで、個人経営の店は営業時間が短めだったり、定休日があったりします。わざわざ街の反対側まで足を延ばすなら、最新の営業時間を事前に確認しておきましょう。

韓国のカフェ文化を楽しむコツ

韓国のカフェ文化をいちばん楽しめるのは、カフェを「観光の合間の休憩」ではなく「観光そのもの」として扱ったときです。午後ごとに一つのエリアを選び、リストを追いかけるより裏路地を歩いてみてください。そして、日本ではなかなか味わえないものを一つ試してみましょう。仁寺洞でナツメ茶を一杯、友人と分け合うパッピンス、聖水の倉庫カフェで焼きたてのパン。移動中にさっとコーヒーと軽食を済ませたいだけならコンビニで十分なので、カフェは腰を落ち着けて空間ごと楽しめるときのために取っておくのがおすすめです。

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