韓国焼肉を地元流に楽しむ:注文から包み方、締めまでの初心者ガイド
豚か牛か、「〇人前」の注文、誰が焼くのか、サムの包み方、締めの冷麺まで。日本の焼肉との違いを交えて、初めての韓国焼肉を地元目線で案内します。

韓国旅行で「これだけは食べたい」と多くの人が挙げるのが、韓国式の焼肉です。日本にも焼肉文化があるので、なんとなく想像がつく気がしますが、実際に店に入ると勝手が違って戸惑う方が少なくありません。肉は大きな塊のまま出てきて、ハサミで切る。頼んでいない小皿がずらりと並ぶ。タレにつけるより、葉っぱに包んで食べる。メニューには「1人前」だけ頼みにくい雰囲気がある。地元の人が何気なくこなしている一連の流れを、店選びから会計まで順番にたどってみましょう。
韓国では焼肉店を「コギチプ(고기집)」、直訳すると「肉の店」と呼びます。韓国観光公社は、コギチプを単なる飲食店ではなく、テーブルで肉を焼き、おかずやチゲ、麺と一緒に楽しむ「ひとつの文化」だと紹介しています。安心していいのは、この文化が初心者にとても優しいことです。店員さんは手助けに慣れていて、たとえ手順を間違えても、たいていすぐに取り返しがつきます。
まずは豚か牛かを決める
韓国の焼肉店の多くは、豚肉中心か牛肉中心かがはっきり分かれています。看板やメニューの最初の数行を見れば、どちらの店かはだいたいわかります。日常的なのは豚肉の店です。にぎやかで、仕事帰りの同僚グループでいっぱいで、注文の基本は「サムギョプサル(삼겹살)」、つまり豚バラ肉の焼肉。韓国観光公社も、サムギョプサルは会社の飲み会の定番だと書いていますが、平日の夜に店をのぞけば、まさにその光景が広がっています。一方、カルビ(骨付きの肋肉)や韓牛を看板にした牛肉の店は、落ち着いた雰囲気で値段も高めの「ちょっと特別な日」の店です。
迷ったら、まずは豚肉から。サムギョプサルは味付けをしていない肉なので、肉そのものとつけダレの味がよくわかり、焼き方で大きく失敗することもあまりありません。日本の焼肉店の豚トロや豚バラのように薄切りではなく、厚めの一枚肉で出てくることが多いのも特徴です。肩ロースにあたる「モクサル(목살)」は脂が少なめで、サムギョプサルと一緒に頼む人も多い部位。カルビのような味付け肉はおいしい反面、焦げやすいので、カルビの店では店員さんが焼いてくれることがよくあります。
| 韓国語の名前 | どんな肉か | よくある食べ方 |
|---|---|---|
| 삼겹살 サムギョプサル | 豚バラ肉。味付けなし。脂と赤身が層になっている | そのまま焼き、サムジャンやごま油と塩につけ、にんにくと一緒にサンチュで包む |
| 목살 モクサル | 豚の肩ロース。バラより脂が少なく、しっかりした歯ごたえ | 粗塩をふって焼くか、ごま油と塩につける |
| 돼지갈비 テジカルビ | 豚の骨付きカルビ。甘めのタレに漬けたものが多い | タレが焦げやすいので注意して焼く。締めに冷麺を合わせることが多い |
| 양념갈비 ヤンニョムカルビ | 牛の骨付きカルビを醤油・砂糖・にんにくのタレに漬けたもの | 一口大に切ってそのまま、またはサンチュやエゴマの葉で包む |
| 차돌박이 チャドルバギ | ごく薄く切った牛の肩バラ(ブリスケット) | あっという間に火が通るので、焼けたらすぐ食べる |
注文は「〇人前」で
焼肉店のメニューは、肉の量を「〇人前(인분/インブン)」で表します。1人前はひとり分の量で、注文は「イインブン チュセヨ(2人前ください)」のように数で伝えます。ここは日本の焼肉店と同じ感覚で大丈夫です。ただ、韓国では「最初は2人前から」という店が少なくなく、1人前だけでは焼き台に火を入れてくれない店もあります。法律や決まりではなく店ごとの習慣で、メニューの下のほうに小さく書いてあることもあります。最初は人数分を頼むのがいちばん無難です。食べ終わったら同じ部位を追加したり、別の部位を試したりすればいいのです。
ちなみに「2」は固有語の「トゥ(두)」ではなく、漢数字にあたる「イ(이)」を使います。理由はフレーズのページで解説しています。言葉が出てこなければ、メニューを指さして指を2本立てるだけでも十分に通じます。
テーブルに並ぶもの

肉が来る前から、テーブルはにぎやかになります。中央には炭火かガスの焼き台があり、ほとんどの焼肉店では上に排気フードがあるか、テーブルに吸煙口がついています。韓国観光公社は、韓国の飲食店ならではの便利な工夫として、店員を呼ぶテーブルの呼び出しボタン、スプーン・箸・ナプキンが入ったテーブル脇の引き出し、そして焼肉店に多い、座面を開けると上着をしまえる収納付きの椅子を挙げています。最後の椅子は、服に煙のにおいが移らないようにするためのものです。
続いて並ぶのが、パンチャンと呼ばれる小皿のおかずです。焼肉店なら、キムチ、ねぎの和え物(パジョリ)、漬物、生のにんにくと青唐辛子、サンチュやエゴマの葉が入ったかご、そして2〜3種類のつけダレといったところ。どれも肉に付いてくるもので、頼み忘れたわけではありません。韓国観光公社によれば、水やおかずのおかわりに追加料金はかかりません。最近はおかずや水をセルフで取る店も増えていて、厨房の近くにおかずの冷蔵ケースやカウンターがあれば、それがセルフコーナーです。日本の焼肉店ではキムチやナムルを別料金で頼むことが多いので、ここはうれしい違いです。

肉は誰が焼くのか
初めての人がいちばん気にするのがここで、答えは店によって違います。街の豚肉の店では、トングとキッチンバサミを使って自分たちで焼くのが一般的です。カルビの店や高めの牛肉店では、少なくとも最初は店員さんが焼いてくれることがよくあります。韓国観光公社も、店員さんが肉を焼いてくれる店では「もう食べられますよ」の声を合図に包み始めればいい、と紹介しています。自分で焼く店でも、慣れていない様子を見ると、店員さんが最初の一巡を返したり切ったりしてくれることがあります。それは注意ではなく親切なので、気軽に任せましょう。
日本の方が特に驚くのが、このハサミです。日本の焼肉は一口大に切った肉が出てきて、各自が自分の分を焼くのが一般的ですが、韓国では大きな一枚肉をそのまま網にのせ、焼き色がついたらトングで持ち上げてハサミで切り分けます。韓国の焼肉を取材したドイツのフードジャーナリストも、Korea.netのインタビューで旅でいちばん印象に残ったものに「ハサミ」を挙げ、箸で食べるのだから肉は口に運ぶ前に切っておく必要がある、と理由を説明しています。テーブルにハサミがなければ、遠慮なく頼みましょう。
焼き方のコツもいくつか。網や鉄板が十分に熱くなってから肉をのせること。サムギョプサルは何度も裏返さず、一、二度返して焼き色をつけること。焼けた肉は端の火が弱いところに寄せて焦がさないこと。そしてセットに付いてくるにんにくやキムチ、きのこも網にのせて、豚の脂でじっくり焼くこと。焼きキムチは日本ではあまり見かけない、韓国焼肉ならではのおいしさです。鉄板が黒く焦げついてきたら、頼めばたいてい新しいものに替えてくれます。
「サム」の包み方
「サム(쌈)」は「包む」という意味で、韓国焼肉の主役ともいえる食べ方です。日本の焼肉が「タレにつけてご飯と一緒に」なら、韓国の焼肉は「葉っぱに包んで一口で」。韓国観光公社は、サンチュやエゴマの葉に肉をのせ、唐辛子みそと大豆みそを合わせた「サムジャン」を添えて一口で食べる、韓国独特の食文化だと紹介しています。ソウル市の観光公式サイトのマナー紹介でも、韓国の食卓では食べ物に手で触れないのが基本だけれど、葉で包むときだけは例外、とされています。手順は次のとおりです。
- サンチュを1枚、手のひらに広げる。エゴマの葉のさわやかな香りが好きなら、上に重ねる。
- 肉を1切れのせる。ごま油と塩につけるか、サムジャンを少しだけのせる。
- 好みで生か焼いたにんにく、青唐辛子、ねぎの和え物、キムチを足す。
- 小さく包んで、一口で食べる。半分かじると、たいてい中身がこぼれてしまう。
大事なのは「一口で」の部分です。韓国観光公社も、口を大きく開けて一度に放り込むのが韓国流だとアドバイスしています。思っているより小さめに包むのがコツで、二巡目にはもう地元の人のように見えるはずです。サムジャンは見た目よりずっと味が濃いので、ほんの少しで十分。毎回包む必要もなく、肉だけをそのまま食べる合間をはさむのも自然な食べ方です。
飲み物は何を頼むか
定番は、緑の瓶に入った透明なお酒・焼酎(ソジュ)を小さなグラスで。ビールと一緒に頼むテーブルも多く、焼酎をビールで割って飲む人もよく見かけます。注ぎ方のマナーは韓国のほかの場面と同じで、自分ではなく周りの人のグラスに注ぎ、年上の人に注いでもらうときはグラスを両手で持ちます。お酌をし合う文化は日本にもあるので、なじみやすいはずです。もちろん強制ではありません。ソフトドリンクや「サイダー(사이다)」と呼ばれるレモンライム味の炭酸飲料はほぼどの店にもあり、お酒を飲まないのもまったく普通のことです。飲む方は、飲酒できる年齢や外で飲める場所について、お酒のルールのページで確認しておくと安心です。
締めは冷麺、焼き飯、それともチゲ
日本の焼肉ではご飯を肉と一緒に食べる人が多いですが、韓国では肉を食べ終えたあとに「締め」を頼むのが一般的です。Korea.netの水原(スウォン)カルビの記事も、まず肉を食べ、そのあとに麺やご飯を食べるという韓国焼肉の流れを紹介しています。韓国観光公社も、最後のテンジャンチゲや焼き飯までが韓国焼肉の楽しみだと書いています。締めの定番は次の三つです。
- 冷麺(ネンミョン)。そば粉の麺を、冷たいスープで食べる「水冷麺(ムルレンミョン)」か、辛いタレで和える「ビビン冷麺」で。カルビのあとの定番で、長い麺は器の中でハサミで切ります。焼肉のあとに冷麺という組み合わせは、日本の方にもおなじみかもしれません。
- ポックムパプ(焼き飯)。肉を焼いた鉄板の上で、残った肉やキムチ、脂と一緒にご飯を炒めます。どの店にもあるわけではないので、メニューで確認を。
- テンジャンチゲ(韓国みその鍋)。ご飯と一緒に頼むことが多く、豚肉の店では定番の締めです。
締めは肉が残り数切れになったころに頼むと、ちょうど食べ終わるタイミングで出てきます。おなかがいっぱいなら、冷麺をひとつ頼んで二人で分けるのもごく普通です。
店員さんの呼び方、会計、チップ
韓国の飲食店では、店員さんが「お料理はいかがですか」と様子を見に来ることはあまりありません。放っておかれているのではなく、用があれば客が呼ぶものだと考えられているからです。テーブルの呼び出しボタンを押すか、ふつうの声で「チョギヨ(저기요)」と言えば来てくれます。日本の「すみません」と同じ感覚で、「ヨギヨ(여기요)」も同じように使われます。どちらも失礼ではありません。肉の追加も、サンチュのおかわりも、お酒の追加も、この一声で頼めます。韓国観光公社は、呼び出しベルの音は思ったより大きいかもしれない、と書き添えています。
食べ終わったら、テーブルに置かれた伝票を持って、または手ぶらで入口近くのレジへ行き、そこで支払います。席までカード端末を持ってきてくれる店はあまりないので、席で待っていても伝票は回収されません。グループなら誰か一人がまとめて払い、あとで精算することもよくあります。そしてチップは不要です。韓国観光公社の公式サイトも、韓国ではチップは必要なく、期待もされていないとはっきり書いています。店を出るときに「チャル モゴッスムニダ(ごちそうさまでした)」と声をかければ、それがいちばんのお礼になります。
服のにおい対策
排気フードがしっかりしていても、店を出るころには服に焼肉のにおいが移っています。韓国の人もそれは承知していて、だからこそ座面の下に上着をしまえる椅子を置く焼肉店が多いのです。席に着いたらすぐに上着をしまう、お気に入りのウールのコートはホテルに置いていく、においが気になる方はきちんとしたディナーや観劇の直前に焼肉を入れない。このくらいの工夫で十分です。服はひと晩風に当てておけば、たいてい気にならなくなります。
ひとりでも韓国焼肉は食べられる?
焼肉はもともと大人数で囲む料理で、「2人前から」の習慣がひとり旅の最大のハードルです。とはいえ、無理というわけではありません。韓国では「ホンバプ(혼밥、ひとりご飯)」という言葉が定着し、Korea.netは、カウンター席でひとりずつ小さな焼き台を使える焼肉店が、大学街や江南(カンナム)を中心に増えていると紹介しています。その記事では、日本と同じようにひとりで食事をするスタイルが韓国にも根付いた、と店主が語っていました。ひとりなら、1人前やひとり用セットをメニューに載せている店を選ぶ、カルビ店のランチセットを狙う、あるいは思い切って2人前を頼んでしっかり夕食にする、という手があります。混み合う夕食どきのピークは避け、迷ったら入口で「ホンジャエヨ、ケンチャナヨ?(ひとりですが大丈夫ですか)」と聞いてみましょう。
初めての韓国焼肉チェックリスト
- 初日は気軽でにぎやかな豚肉の店へ。牛カルビは特別な日に。
- 注文は「〇人前」で。最初は2人前からという店も多い。
- 店員さんが焼いてくれるならお任せ。自分で焼くときは返しすぎず、ハサミで切る。
- サムは小さめに包んで一口で。
- おかずと水のおかわりは無料。遠慮なく頼む。
- 締めは冷麺、ポックムパプ、テンジャンチゲから。
- 呼ぶときはボタンか「チョギヨ」。会計はレジで、チップは不要。
入口から見ると複雑そうな韓国焼肉ですが、実際は韓国でいちばん気楽な食事のひとつです。焼くのは網、足りないところは店員さんが補ってくれて、隣のテーブルでも同じように、みんなが話し、包み、「もう1人前」と追加しています。日本の焼肉との違いを楽しみながら、まずは周りを少し眺めてから、その輪に加わってみてください。
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